本日の心理学・名言1459-8

発達の最近接領域

発達の最近接領域とは、
ロシアの発達心理学者のヴィゴツキーが提唱したものです。
子どもが新しいことにチャレンジする際に、自分一人の力だけでそれを達成できるときと、大人がほんのちょっと手助けをしてあげることで達成することができることがあります。
その2つの水準のズレをヴィゴツキーは発達の最近接領域
呼びました。
ごくごく簡単に言ってしまうと、
その人が持っている成長可能性とでも言えましょうか。
発達の最近接領域の幅、つまり自力でできることと手助けによってできるようになることのズレは個人差があります。
例えば9歳の子どもが二人いたとします。
1人は手助けによって12歳のレベルまで達することができますが、
もう1人は10歳のレベルが限度である、というようなことです。
さて、ここまで子どもを中心に書いてきましたが、これは子どもに限ったことではありません。
一般的に「発達」という言葉は子どもの成長を意味することが多いのですが、心理学の領域では発達を一生涯続くものとして考えています。
この発達の最近接領域も多くは保育・学校教育で活用される理論ですが、年齢に関わらず大人にも適用できる考え方です。
大人であっても色々なことに新しくチャレンジします。
一番大きなチャレンジは、就職(および転職)かと思います。
新人の頃は多少の予備知識はあったとしても、基本的にはド素人であり、現場で色々なことを学んでいきます。
ある程度基本的なことができるようになると(3年目くらいでしょうか)、自分の責任で仕事をさせてもらえるようになるかと思います。
その際の内容や先輩、上司からのサポートというのは非常に重要になってきます。
仕事の内容自体がこれまでと変わらないものだったらなかなか成長することは難しいでしょう。
反対にあまりにも責任が重すぎる難しいものも扱いきれずに途中で止まらざるを得ないでしょう。
適度な難易度の内容と、適度なサポートを得ることで、技術的にも精神的にも成長することができるのだと思います。
反対の立場から言うと、後輩・部下を指導する立場であれば、その人がどのくらいの負荷に耐えられ、どのくらいのサポートをすることによって課題を達成できるか良く考えて仕事を振ることが重要です。
そのようにして課題を達成できた場合、自分に自信を持つことができ、仕事へのモチベーションも高まり、さらなる成長の足がかりとなります。
言われてみれば単純なことだと思います。
でも、それを意識してやっている人あるいはできている人は少ないと思います。
人を育てるのが上手い管理職の人は、こういったことを意識して、あるいは自然にやっているのだと思います。
部下からすると、自分のことを信頼して責任ある仕事を任せてもらい、口は挟まないけど必要なサポートをしてくれて、
自分の成長可能性を引き出してくれる上司なんて、・・・めったにいないだろうけど、いたら仕事が楽しくてしょうがないでしょうね。

ちなみに、これはカウンセリングにおいても当てはまります。
カウンセラーがクライエントさんに対して言いたいことがあるのだけれど、今それを言ってもクライエントさんが消化しきれないなということがあります。
その際には、あえて今それを言わず、時期が来るのを待って伝えるようにすることがあります。
自分のことで手一杯にならない、
余裕のある大人でありたいものですね。

トップページへ戻る