【D】うつ病について

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うつ病診断・チェックテスト
もう迷わない!医者が使っている国際基準のうつ病診断表3つでうつを徹底チェック。

チェック1:重いうつ病のチェック
まずは重いうつ病「大うつ病性障害」のチェック。
他の本やサイトだとこのチェックが一番引用されますが、実際はこのチェックに当てはまるほど重症の人なんて 23% くらいしかいないのです。
オリジナルはアメリカ精神医学会が作った診断マニュアルで、DSM-IV というものです。
(A1):この2週間、ほぼ1日じゅう憂うつ。しかも毎日。「YES」or「NO」
(A2):この2週間、ほぼ一日中何もしたくないし、何も面白くない。しかも毎日。「YES」or「NO」
(A3):食事療法をしていないのに、体重が1ヶ月に5%以上増減した。
またはほとんど毎日の食欲の減退または増加。「YES」or「NO」
(A4):この2週間、眠りについて、ほとんど毎日以下のどれかがある。「YES」or「NO」
・寝付けない
・夜中に起きる
・早朝に目が覚めてしまう
・寝過ぎ
(A5):この2週間、ほとんど毎日、動作や会話の速度が遅い。
または気分が焦っている(乱暴な動きや早口など)。「YES」or「NO」
(A6):この2週間、ほとんど毎日、疲れやすい。または気力がわかない。「YES」or「NO」
(A7):この2週間、ほとんど毎日、価値あるものなんて何もないと思う。
または罪悪感がある。「YES」or「NO」
(単に自分を責めることや、病気になったことに対する罪の意識は含みません)
(A8):この2週間、ほとんど毎日、思考力や集中力が鈍いと思う。
または、何かを決めることがなかなか出来ない。「YES」or「NO」
(A9):この2週間、死について繰り返し考える。
(単純に「死ぬのが怖い」と考え続けることは含みません)
または自殺したいと思う。
(具体的な計画があるかどうかは問いません)「YES」or「NO」
(B):この2週間、気分爽快だったりよく活動できたりした経験がない。「YES」or「NO」
(※もし気分爽快な期間があったら、単純なうつ病ではなく「躁うつ病」という別の病気の可能性があります)
(C):上記の A. の症状のせいでとても苦しい思いをしているか、仕事や家事をするのに困るほどつらい「YES」or「NO」
(D):上記の A. の症状は、薬の副作用や薬物濫用ではなく、体の病気による症状でもない「YES」or「NO」
(E):上記の A. の症状が愛するものを失った後も2ヶ月続いている。「YES」or「NO」
重いうつ病の条件は、以下の全てを満たすこと:
・A1 か A2 のどちらかに当てはまる
・A3 ~ A9 のうち、5つ以上当てはまる
・B ~ E の全部に当てはまる
このチェックに当てはまらなかった方へ:次のチェック2:軽い~重いうつ病へどうぞ。

チェック2:軽症~重症うつ病のチェック
今度は重症者用ではなく、オールマイティに判定できるチェックをやってみましょう。
これはさっきの DSM-IV の次にメジャーな基準、ICD-10 。WHO(世界保健機構)が作ったものです。
最近の2週間を振り返って、それぞれいくつ当てはまるか数えてください。
(大項目):憂うつな気分。「YES」or「NO」
(大項目):何をしても楽しくない、又は何かをしようという気がない。「YES」or「NO」
(大項目):疲れやすい上、何かをするのがおっくう。「YES」or「NO」
(小項目):集中力と注意力が減った。「YES」or「NO」
(小項目):自分は大したことない人間だと思い、自分に自信がない。「YES」or「NO」
(小項目):価値あるものなんて何もないと思い、罪の意識もある。「YES」or「NO」
(小項目):将来に希望がないと思い、悲観的な気分だ。「YES」or「NO」
(小項目):自傷(自分を叩いたり刃物などで傷つける)や自殺することを考えたり、実際に試した。「YES」or「NO」
(小項目):睡眠障害がある (寝付きが悪い、夜中に目が覚める、目が覚めるのが早すぎる等)。「YES」or「NO」
(小項目):食欲がない。「YES」or「NO」
結果の見方
大項目2つと小項目2つに同時に当てはまる   : 軽症
大項目2つと小項目4つに同時に当てはまる   : 中程度
大項目全てと小項目4つ以上に同時に当てはまる : 重症
このチェックに当てはまらなかった方へ:次のチェック3:軽いうつ病へどうぞ。

チェック3:軽いうつ病のチェック

最後は最近話題の「軽症うつ病」のチェック。正確には「気分変調性障害」と言う。冴えない状態が慢性的に(2年以上)続くもので、大昔は「抑うつ神経症」なんて呼ばれてた時期もありました。
名前からすると「ただ軽いだけ」のように思えますが、これは「従来の重いうつ病からすれば軽い方」ということなのです。これもオリジナルは DSM-IVです。
(A):少なくとも2年間、憂うつでない日よりも憂うつな日の方が多い
(※青少年までの場合、気分はいらいら感の場合もありますので、期間は最低1年間あること)「YES」or「NO」
(B1):食欲減退、または過食。「YES」or「NO」
(B2):眠りについて、ほとんど毎日以下のどれかがある: 「YES」or「NO」
・寝付けない
・夜中に起きる
・早朝に目が覚めてしまう
・寝過ぎ
(B3):疲れやすい。または気力がわかない。「YES」or「NO」
(B4):自尊心が低下している。「YES」or「NO」
(B5):集中力が低下している、または決断が困難になった。「YES」or「NO」
(B6):絶望感がある。「YES」or「NO」
(C):最近2年(青少年については1年)の間、上記の A と B の症状が消えた期間が連続して2ヶ月未満。「YES」or「NO」
(D):大うつ病性障害(重いうつ病)でもなく、その治りかけでもないこと。つまり最初の2年間(小児や青年については1年間)、大うつ病性障害の条件を満たしたことがないこと。 「YES」or「NO」
(※一度大うつ病性障害にかかっても、2ヶ月以上症状がなかったならば治ったものと見なせるので、その場合は「改めて気分変調性障害にかかった」と考えます。 また、気分変調性障害になってから2年間(小児や青年については1年間)経った後に大うつ病性障害の条件も満たすことがあり、この場合は併発したと見ます)
(E)基本的に気分が沈みっぱなしで、気分爽快になった期間は連続して4日未満
「YES」or「NO」
(F):統合失調症(旧称「精神分裂病」=陽性:幻覚・幻聴・妄想など、陰性:ひきこもりなど)や妄想性障害になっていない。「YES」or「NO」
(G):上記の A と B の症状は、薬の副作用や薬物濫用ではなく、体の病気による症状でもない。「YES」or「NO」
(H):上記の A の B 症状のせいでとても苦しい思いをしているか、仕事や家事をするのに困るほどつらい「YES」or「NO」
気分変調性障害の条件は、以下の全てを満たすことです。
・A に当てはまる
・B1 ~ B6 のうち、2つ以上当てはまる
・C ~ H の全部に当てはまる

うつ病の症状

うつ病(うつびょう、鬱病、欝病)とは、気分障害の一種であり、抑うつ気分や不安・焦燥(しょうそう~イライラ、あせり)、精神活動の低下、食欲低下、不眠症などを特徴とする精神疾患です。
症状 :うつ病の症状を理解するには、うつ病についてのDSM-IVの診断基準を参照するとよいでしょう。
DSM-IVの診断基準は、2つの主要症状が基本となります。それは「抑うつ気分」と「興味・喜びの喪失」です。精神症状と共に身体的な症状を生じる。身体的な症状は、診断に先立って訴えられることもあります。

精神症状
ボーっとすることが多くなり、口数が少なくなる。学校・会社・部活動では、休みがちになったり、不登校になる。集中力がなくなり、運動神経や記憶力が低下し、勉強ができなくなったり、人の話を聞けなくなる。
「抑うつ気分」とは、気分の落ち込みや、何をしても晴れない嫌な気分や、空虚感・悲しさなどです。
「興味・喜びの喪失」とは、以前まで楽しめていたことにも楽しみを見いだせず、感情が麻痺した状態です。この2つの主要症状のいずれかが、うつ病を診断するために必須の症状であるとされています。これら主要症状に加えて、「抑うつ気分」と類似した症状として、「自分には何の価値もないと感じる無価値感」、「自殺念慮・希死念慮」、「パニック障害」などがあります。

身体的症状
頭が割れるような頭痛、不眠症などの睡眠障害、消化器系の疾患で急性胃炎、慢性胃炎、胃潰瘍、摂食障害に伴い、食欲不振と体重の減少あるいは過食による体重増加、全身の様々な部位の痛み(腰痛、頭痛など)などがあります。
訴えとしては「食欲がなく体重も減り、眠れなくて、いらいらしてじっとしていられない」もしくは「変に食欲が出て食べ過ぎになり、いつも眠たく寝てばかりいて、体を動かせない」というものあります。
うつ病の約8割に不眠が、1割に過眠が見られます。

その他
対人関係が悪化し、さらに病気を悪化させるという悪循環が起きやすくなります。

*うつ病の成因(原因)
うつ病の成因論には、生物学的仮説とそれに付随する心理的仮説があります。
生物学的仮説は、薬物の有効性から考え出されたモノアミン仮説、死後脳の解剖結果に基づく仮説、低コレステロールがうつおよび自殺のリスクを高めるとの調査結果、MRIなどの画像診断所見に基づく仮説などがあり、2010年現在も活発に研究が行われています。モノアミン仮説のうち、近年はSSRIとよばれるセロトニンの代謝に関係した薬物の売り上げ増加に伴い、セロトニン仮説が主流となっています。
@SSRIについて
選択的セロトニン再取り込み阻害薬(せんたくてきセロトニンさいとりこみそがいやく、Selective Serotonin Reuptake Inhibitors、SSRI)は、抗うつ剤の一種。シナプスにおけるセロトニン受容体の再吸収に作用することで病気としてのうつ症状~不安などの改善を目指す薬。
旧来の三環系などと呼ばれる抗うつ薬は副作用があり、医者または患者によっては敬遠されていたことから、副作用を少なく・より選択的に作用することを目的として開発された。肝毒性、心・血管副作用や、鎮静作用、口の渇き・便秘など抗コリン作用が原因と思われる副作用は減少したが、セロトニン症候群、賦活症候群、SSRI離脱症候群(中断症候群)など旧来の抗うつ剤ではあまり報告のなかった副作用が発生している。
「選択的」とは他の神経伝達物質に比べ、セロトニンの再取り込み阻害作用のみでアセチルコリン等は阻害しないこと、ノルアドレナリン対セロトニン及びドーパミン対セロトニン比が大きいことを意味する。
@脳の作用機序(モノアミン仮説~セロトニン仮設
シナプス前ニューロンから放出された神経伝達物質セロトニンはシナプス後ニューロンにあるセロトニン受容体に作用する。シナプス間隙に貯まったセロトニンは、セロトニントランスポーターにより再取り込み(吸収)され、再利用される。うつ状態にある人はシナプスにおけるセロトニンの濃度が低下し、セロトニン受容体にセロトニンが作用しにくい状態となっているという仮説(モノアミン仮説)がある。SSRIはセロトニンを放出するシナプスのセロトニントランスポーターに選択的に作用し、セロトニン再取り込みを阻害する。
このことによって結果的にセロトニン濃度がある程度高く維持される。

*生物学的仮説とそれに付随する心理的仮説

うつ病にかかりやすい病前性格として、主に、メランコリー親和型性格、執着性格、循環性格、が日本では提唱されています。(米英圏では強迫性)。しかし、近年はうつ病概念の拡大や社会状況の変化に伴い、下記の性格に該当しないうつ病患者が増加しています。
·メランコリー親和型性格は1961年にテレンバッハが提唱したもので、秩序を愛する、几帳面、律儀、生真面目、融通が利かないなどの特徴を持つ。主として反復性のないうつ病を呈するとされます。
執着性格は1941年に下田光造が提唱したもので、仕事熱心、几帳面、責任感が強いなどの特徴を持つ。反復性うつ病ないし躁うつ病の病前性格の1つであるとされる。
·循環性格はエルンスト・クレッチマーが提唱したもので、社交的で親切、温厚だが、その反面優柔不断であるため、決断力が弱く、板挟み状態になりやすいという特徴を持つ。躁うつ病の病前性格の一つであるとされます。

*発症リスクを上げる? 下げる? 冬場のうつと甘いモノの関係~参考程度
天高く馬肥ゆる……ではないが、秋から冬に過食傾向に陥る方は案外多いのではないだろうか。健康的な食欲ならまだしも、どか食いを繰り返し、さらに「気分の落ち込み」が加わるようなら、季節性のうつかもしれない。
秋から冬にかけて発症するうつ病は「冬季うつ病」と呼ばれる。典型的なうつ症状に加え、甘いものやポテトチップなど炭水化物への欲求が強く出るのが特徴。日照時間が短くなると、精神を安定させる神経伝達物質「セロトニン」の分泌量が減少する。その不足を補うためセロトニン生産に必要な糖質を欲するのだ。冬の日照時間が短い北欧では、人口の1割がこの症状に悩んでいるとされる。
さて、その北欧は東フィンランド大学から、うつ病と食事との関連について報告が出された。中高年男性の食習慣と心疾患、2型糖尿病などの関連を調べるうち、うつ病との関連が浮かび上がり、あらためて追跡調査を試みたもの。
その結果、新鮮な野菜や果物、全粒穀物、鶏肉や魚、低脂肪のチーズを中心とした「健康的な食事」はうつ病リスクの低下と関連していた。また、以前から予防効果あり、とされてきた葉酸(レバーやホウレン草などに含まれる)の摂取と、リスクの低下があらためて示された。しかし、同じく予防効果ありとされてきたビタミンB12の摂取量や、EPAなどω-3系・ω-6系脂肪酸の血中濃度との関連は認められなかった。
一方、うつ病リスクを悪化させる食物には、ハム・ソーセージなど加工肉、菓子パン、スイーツやスナック菓子、糖分が多い飲料、ポテトフライなどジャガイモの加工品と、ジャンクフードが並ぶ。ジャンクフード依存がうつ症状を招くのか、その逆かは明確ではないものの、不健康な食事が悪化要因になることは確かだろう。
気分が落ち込み「甘いもの」「口当たりのよいもの」が恋しくなるのは人情だ。ただし、うっかり耽溺するのは考えものである。この季節の落ち込みの特効薬は午前中のうちに強い光に当たること。専用の人工照明もあるが自然光で十分だ。晴れた日も、曇り空でも、カーテンを思い切り開けよう。

うつ病は生活での悩み(ストレス)が鬱の原因になるという主張はことに反論を唱える者はいませんが、決してすべてのうつ病がこの心理的仮説に一致する訳ではありません。
例えば家族の一員の死などで鬱になる場合でも個人差があり回復に数年と言うケースも存在します。またまれに理由も無く深刻な鬱である場合もあります。ただしこのような心理的仮説はうつ病を生物学的に捕らえ治療を行うという考え方に対する疑問として掲示される仮説なのです。

また、認知療法の立場(自動思考と認知の歪み1/2参照からは、人生の経験の中で否定的思考パターンが固定化したことがうつ病と関連しているとされています。

物質誘発性気分障害はうつ病に類似していおり、長期間のレクリエーション、薬物使用・薬物乱用・抗不安薬や睡眠薬の離脱症状に起因します。

薬物およびアルコールの使用
DSM-IVでは、その原因が「物質の直接的な精神的作用」に起因すると判断される場合は、気分障害の診断を下すことはできないとしています。うつ病に似た症状が物質乱用や薬物有害反応によって起こされていると判断される場合、それは”substance-induced mood disturbance”(物質ー誘発性気分障害)と定義されます。 アルコール依存症または過度のアルコール消費は、大幅にうつ病の発症リスクを増加させます。

うつ病の多くは、脳内で明らかに健常者とは違う脳内物質のバランスの崩れや、活性化しないはずの部位が活性化していたりするのですが、その病態を実際に見て、確証が欲しいという声に応えるように、さまざまな機材や試験薬の研究が重ねられています。

実際に数値や画像などで「病気である」という確証が得られることで、病気に対して真剣に取り組まないといけないという動機につながることもあります。

例えば、うつ病は精神科医が面談して診断するというのが一般的であり、今でもそれが主流なのですが、最近は光トポグラフィー・唾液検査などの機械がうつ病の客観的診断の助けになると評判になっています。

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心の病気の診断を補助する1/2
*光トポグラフィー検査
脳の活動状態を表す波形は、病気によっていくつかの典型パターンを示します。
光トポグラフィー検査には、赤外線よりもやや波長が短い近赤外光(きんせきがいこう)と呼ばれる光が使われます。この光を頭部に当て、反射してくる光を計測し、頭皮から3cmほど内側にある大脳皮質の血液のヘモグロビン量の変化を読み取ります。これで脳の活動(活性化)状態を数値化して、その波形をリアルタイムで画像化します。
 近赤外光は、銀行ATMなどで手のひらや指の静脈パターンを読みとる生体認証にも使われている安全な光です。皮膚や骨は通り抜けるものの、血液中のヘモグロビンには吸収されるという特徴があり、これを利用しているわけです。
患者さんは近赤外光を照射する出力部分と取り込む部分がついた特殊な帽子をかぶり、いすに腰掛け、指示される課題に答えます。課題は、最初に「あ、い、う、え、お、をくり返し言う」(1分間)、次に「ある一文字で始まる言葉を言う」(例えば、“い”で始まる言葉。始まりの一文字を変えて3通り、各20秒の間に言う=合計1分間)、最後に再び「あ、い、う、え、お、をくり返し言う」(1分間)といった内容。検査時間は、前後の準備も含めて10~15分程度です。
最初の1分間は、とくに大脳を使っていないときの脳波を見るものです。ポイントは、「“い”で始まる言葉は…」と大脳を使い始めてからです。大脳を使い始めたとき、血液量がどのように、どれくらいまで増加してくるのかを波形でチェックするのです。波形は、健常者、大うつ病性障害(うつ病)、双極性障害(躁うつ病)、統合失調症で次のような典型パターンを示すことがわかっており、それに当てはめて診断に役立てるのです。

●健常者:課題が始まると大脳がすぐに反応して血液量が急増。課題に答えている間中、血液量は高いレベルを維持する
●うつ病:すぐに反応するものの、血液量はあまり増えない
●躁うつ病:課題が始まってからも血液量がなかなか増えない
●統合失調症:血液量が十分に増えない、増加、減少のタイミングが良くない

問診による診断と、光トポグラフィー検査の一致率は3つの病気とも約7~8割とされています。ただし、この検査で、例えばうつ病の波形が出たとしても、他の病気によってうつ病型の波形が出ていることも考えられ、診断には患者の全体をとらえた判断が必要となります。精神科領域の診断はあくまで医師の問診がベースになることには変わりなく、この検査はそれを補助する客観的なデータとして考慮されます。
ちなみに費用は ¥13,000円程度ですが、実施している病院は国内で13箇所ぐらいです。

 

心の病気の診断を補助する2/2

唾液検査

●唾液から、うつ病診断が可能に・・・

光トポグラフィーの検査より、もっと簡単なうつ病の検査方法も登場し始めています。唾液からストレスにまつわる分泌物を調べ、それを数値化するというものです。
身体ストレスの負荷が高いと、脳が非常事態警報を発して副腎皮質からコルチゾールというホルモンの分泌が促されます。そこで、採血してコルチゾールの血中濃度を計ればストレス数値としてわかりやすいが、いちいち採血するのは採るほうも採られるほうも大変です。
近年、コルチゾール血中濃度は唾液中のコルチゾールに反映されることがわかってきたので、ガムをかむような要領で唾液採取用のスポンジに唾液を染み込ませるだけで検査が可能となりました。これなら痛みも伴わないし楽です。

もう一つ、唾液でストレス状態を調べる方法があります。それはクロモグラニンAという物質を測定するのですが、この物質は副腎髄質から放出されるアドレナリンの量と関係しています。アドレナリンは精神的ストレスの程度と関係が深い物質で、以前から注目されていましたが、アドレナリンは代謝が早く、刻々と濃度が変化することや、採血のときの痛み刺激だけでも濃度が変化するので測定が難しく、有効な数値はなかなか出せませんでした。
しかし、唾液中のクロモグラニンAという物質は、比較的安定で副腎髄質からアドレナリンと一緒に放出されるので、アドレナリンの濃度そのものよりアドレナリンがどのくらい出ていたか、ある意味、興奮やストレスの蓄積状態を示し、転じてストレスの度合いを推し量りやすいのです。
そして現在、いくつかの病院で行うことができる検査として、グロモグラニンAをはじめ数種類のうつ病と因果関係のある成分を分析、数値化することができるようになってきています。あくまでストレス状態を数値化するだけのもので、うつ病診断にそのまま使えるわけではありませんが、費用も5000円以下で、何よりも唾液を採取するだけなので、痛みもありません。
まだ取り扱っている病院は少ないので、診断を受けたい場合は、最寄りの病院に事前に問い合わせてみるといいでしょう。

*治療法

うつ病の症状を緩和していくためには、少しずつリハビリをしていく必要があります。できる範囲でやれることを処理していくことで、自信を取り戻すことが可能となります。とはいえ、いきなり負荷の高いことをやろうとすると、失敗してしまい更に落ち込む原因となってしまいます。まずは、部屋の掃除などから始めるといいでしょう。自分のペースで行動可能ですし、実際に目に見える形で成果が残ります。さらに、生活空間をスッキリすることで、気分もリフレッシュすることが可能です。

@回復期には少しずつ慣らしていく

うつ病が進行している状態だと、ひどい抑うつ感で何事も手につかなくなってしまいます。これを治療するためには、じっくりと休養を取ることが大切となります。しかし、投薬治療(SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害剤)が中心的)、光療法・経頭蓋磁気刺激(rTMS) 、食事療法などによって少し症状が緩和されてきたら、少しずつ以前の生活リズム(起床、食事、就寝など)の状態に戻していかなければなりません。最終的には社会復帰をしなければならないことは言うまでもありません。いきなり仕事に戻ろうとしても、うまくいかず結局、再度自信を喪失する原因となってしまいます。そうなると、症状はかえって悪化をして、再燃をしてしまいかねません。
できる範囲で、少しずつハードルを上げてリハビリをしていくことが非常に重要なのです。
服薬と生活リズムで、自ずから何か行動をしたくなるのを待ち、それが来たら、心理療法としては、傾聴カウンセリング→認知行動療法が(自動思考と認知の歪み1/2参照)一般的です。

昨今、現在心理療法(カウンセリング)より「掃除」と言われるくらい「掃除の重要性」が注目されています。

部屋の掃除はちょうどいい慣らしになる
掃除というのは、意外と思考能力と体力を使うものです。自分の部屋の掃除をする場合、「失敗」ということはありえません。誰にとがめられることもないからです。作業の中でも、落ち込みの少ない部類に入るのです。少しずつ、やる気の起きる範囲で片付けていきます。すると、どんどん部屋がキレイになっていくのが自分でも分かります。自分がその作業を進めてきたんだ、という達成感を得ることもできます。部屋の掃除がうまくいったら、できる範囲で他の場所を掃除してみましょう。家族から感謝もされるでしょうし、自分の存在意義を確認できるはずです。

キレイな空間はリフレッシュに最適

自室が汚れていると、気持ちまでだらしなくなってしまいます。圧迫感を感じ、フラストレーションがたまる原因ともなります。これを解消させるためにも、部屋の掃除は有効です。綺麗に保たれた空間では、リラックスして過ごすことができます。治療中・回復中にかかるストレスをできる限りなくすというのは、うつ病治療の基本です。このように、部屋の掃除はうつ病治療にかなり有益なのです。小さなことですが、その一歩が重要なのです。
毎日、自分の顔を鏡でチェックするのも回復の度合いを見る目安になります。

SSRI:選択的セロトニン再取り込み阻害薬(せんたくてきセロトニンさいとりこみそがいやく、Selective Serotonin Reuptake Inhibitors)抗うつ剤の一種。
シナプスにおけるセレトニンの再吸収に作用することでうつ症状、病気としての不安の改善を目指す薬。2009年5月現在、日本国内で100万人以上が使用していると推定されている。
旧来の三環系などと呼ばれる抗うつ薬は副作用があり、医者または患者によっては敬遠されていたことから、副作用を少なく・より選択的に作用することを目的として開発された。肝毒性、心・血管副作用や、鎮静作用、口の渇き・便秘など抗コリン作用が原因と思われる副作用は減少したが、セレトニン症候群、賦活症候群、SSRI離脱症候群(中断症候群)など旧来の抗うつ剤ではあまり報告のなかった副作用が発生している。
「選択的」とは他の神経伝達物質に比べ、セロトニンの再取り込み阻害作用のみでアセチルコリン等は阻害しないこと、ノルアドレナリン対セロトニン及びドーパミン対セロトニン比が大きいことを意味する。
SSRIの概念は、クリーンで、特異的に効き、非選択的な三環系抗うつ剤より副作用が少ない印象を伴うが、「選択的」は、薬理学者と臨床医にとって異なることを意味している。薬理学者にとっては、ノルアドレナリン系を除くすべての脳システムに影響を与える可能性があるもので、その意味ではどの三環系抗うつ薬よりも「ダーティー」な薬かもしれない。臨床医が脳の一つの場所にだけ作用する意味だと考えているとしたら、勘違いなのです。

光療法:一部の睡眠障害やうつ病に有効とされる治療法の一種である。また、生体リズムを整える効果があるとして、健康法の一種としても用いられることがある。。
光療法は非季節性のうつ病の治療にも有効であることが実証された。光療法がうつ病に効果があるかどうかは古くから検討されてきたものの、有効、無効の両方の報告があり、有効であることの決定的な証拠はなかったが、最新の研究成果によりその有効性が実証されるに至っている。
照射光~照度と時間については諸説があり、医療機関によって指示される照度と時間は異なるが、2,500ルクス以上で有効との意見が多い。しかし、実際の治療では、5,000-10,000ルクス程度の照度を30分-1時間程度照射するケースが多い。有効/無効に個人差はあるが、有効の場合は数日~2週間程度で効果が現れると言われる。また、改善した状況を維持するため、効果発生後も定期的に実施するように指示される場合もある。
自然光でもよいが、光の照射時間を変えられる点(睡眠障害治療では夜間に照射するケースがある)、照度調整が可能である点(明るすぎる場合、人によっては不快に感じる)、室内使用可能である点(うつ状態では、そもそも戸外に出たがらない)などから、治療目的では人工光が用いられるケースが多い。
自然光を用いる場合、とくに健康法を目的とする場合、「朝日を浴びる」という表現が用いられることがあるが、曇り空は約10,000ルクス、雨空であっても約5,000ルクスと光療法としての照度は充分あるため、必ずしも日光(晴れの日)だけを選んで浴びる必要はない。もちろん約10,000以上のルクスの照度を持つ「朝日を浴びる」ことができるなら、それが最高の光療法である。

反復経頭蓋磁気刺激法rTMS (Repetitive transcranial magnetic stimulation) :
#rTMSは脳に長期的な変化を与える。多くの小規模な先行研究により、この方法が多くの神経症状 (例えば、頭痛脳梗塞パーキンソン症候群ジストニア耳鳴り) や精神医学的な症状 (例えば うつ病幻聴) に有効な治療法であることが示されている。
#rTMSとは、脳の神経細胞への磁気刺激によって、脳の機能を調整する方法です。前頭前野と呼ばれる脳部位をrTMSで刺激することにより、うつ症状を改善する効果があると言われています。
#rTMSは、安全で副作用が少なく、薬物療法の効果が十分でないうつ病患者さんを対象として薬物療法と同等の有効性が確認されました。アメリカ、カナダ、オーストラリア、ヨーロッパの一部の国ではうつ病に対する治療法として承認されています。
#rTMSは、日本では神経の検査機器として保険承認を受けており、さまざまな治療やリハビリテーションにも研究的にも応用されていますが、うつ病の治療機器としてはまだ保険承認されておらず、近い将来の承認が期待されています。
現在、新型うつ病(うつ病について2/2)の治療に置いての効果が期待されています。

*食事療法
必須アミノ酸「トリプトファン」は、
主に食品のタンパク質(魚の赤身など)に含まれていて、
体内に入って脳に運ばれたあと、セロトニンに変化します。
とくに太陽の光を浴びることにより、セロトニンの分泌は促進されます。
投薬治療のSSRIの見地からすると有効であるといえます。

*ECT
精神科電気けいれん療法(以下、ECTと表記)は1938年以来、多くの患者さんに行われている精神科専門療法の一つです。電気で頭部を刺激することにより、脳のけいれんを誘発し、様々な精神疾患によって障害を受けた脳の機能を回復させようとする治療法です。自殺の危険が切迫したうつ病などでは第一選択の治療法とされており、さらに精神症状が重く、全身状態が悪化している症例において、副作用などで薬物療法の効果が期待できず、速やかな治療が必要な場合などでもECTは有効性と即効性のため、未だに欠かせない治療手法です。 

主たる適応はうつ病であり、中でも中高年以降の微小妄想(罪業、貧困、心気妄想)伴い、また拒食、拒薬、自殺念慮がつよい重症の症例にECTを行い、90%以上症例で十分な効果が得られています。他の疾患では統合失調病緊張型 遅発性緊張病、疼痛性障害などでも有効です。

@うつ病の発症から回復までの流れ

うつ病は診断を受けてから回復するまでに時間がかかるのが一般的で、その過程は、急性期・回復期・再発予防期の大きく3つの段階に分けられます。それぞれの期間は人によって異なりますが、ここではごく典型的な経過と目安となる期間を紹介します。

回復に向けて知っておいて欲しいことはこのコンテンツとは別に「回復に向けて」のコーナーで紹介しています。
そちらも合わせてご覧ください。

急性期(診断~3カ月程度)

うつ病の診断を受けてから、十分な休養をとりながら適切な薬物治療を開始することで、1~3カ月ほどで症状が軽快(症状が軽くなること)するのが一般的ですが、人によっては半年以上かかるケースもあります。抗うつ薬による治療は少量から様子をみながら開始し、徐々に増量して治療に必要な量を処方することになります。効果が現れるまでには時間がかかりますから、焦らないで薬物治療を継続してください。急性期は休養がなによりも大切ですので、主治医の指示に従って、できるだけストレスの原因から離れて休養に専念しましょう。

回復期(4~6カ月以上)

回復期には、調子がよい日の翌日にまた悪化するといったように症状が波のように上下しながら一進一退を繰り返し、徐々に改善していきます。調子のよい日が続いたからといって、「もう治った!」と勝手に判断して無理をしたり、薬を止めてしまったりすると、症状が悪化して回復までに余計に時間がかかってしまうこともあります。焦ることなく薬物治療を続けましょう。
休職して治療を続けている方はある程度調子がよくなると職場復帰を焦りがちです。急性期よりもだいぶ気分が楽になって家庭でゆっくり過ごすことはできますが、職場に戻って以前のように働きはじめるには時期尚早です。少しずつ、無理のない程度に散歩をしたり図書館に行ってみたり昼間の活動量を増やしながら、生活リズムを整えていく時期です。また、うつ病になった当時のことを振り返ってみて、再発を防ぐためにはどうしたらよいか、主治医と話し合いながら社会復帰後の過ごし方について考えておきましょう。
復職にあたってはリワークプログラムなどを利用して、徐々に就業リズムに体と心を慣らしていくとよいでしょう(詳しくは「社会復帰に向けて」を参照ください)。復職してもしばらくの間は就業時間を減らしたり、負担の少ない部署に配置転換してもらったり、職場での協力は欠かせませんから、主治医と復職の相談をする際には上司にも同席してもらえることが理想です。主婦の方が家事に復帰する際にも復職と同様に段階的に少しずつ仕事量を増やすようにします。同居する家族にも協力してもらいながら、無理なくできることを少しずつこなしていくようにしましょう。

再発予防期(薬物治療:1~2年)

回復期を過ぎ、症状が安定して社会復帰を果たすことができても、まだまだ油断はできません。うつ病は再発しやすいという特徴があるため、回復期を過ぎても1~2年間は薬物治療を継続してうつ病の再発を予防しながら調子のいい状態を維持する必要があります。勝手に薬を飲むのを止めてしまうのは禁物ですが、飲み忘れにも注意が必要です。
薬を止める際には、かならず主治医の指示に従ってください。自分の判断で急に薬を飲むのを止めてしまったり薬の量を減らしてしまったりすると、めまいやふらつき、吐き気、嘔吐、倦怠感などが生じるおそれがあるからです。

そして、うつ病になってしまった原因をもう一度考え直して、環境調整を心がけましょう。また、調子が悪くなりはじめる際にどんな症状(サイン)がみられるか、家族や周囲の人たちと話し合っておくことも大切です。再発のサインは人それぞれですが、気分の落ち込みやイライラ感、不眠など、はじめにうつ病になった時の症状とほぼ同じです。自分では気づかない再発のサインが出ていた時に注意してもらえるようお願いしておくとよいでしょう。

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