自動思考~認知の歪み1/2

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自動思考とは「出来事→感情」という流れの間に入るもので、「出来事→自動思考→感情」といようなイメージで捉えてください。

自動思考とは、ある出来事が起こったときに瞬間的に浮かぶ思考のことで、誰もが持っている「解釈の癖」なのです。
しかし、この「解釈の癖」が日常生活に支障をきたしいる場合には、「認知の歪み」と呼び、
カウンセリングなどによる治療が必要となります。

認知の歪みの典型的なパターン

典型的な自動思考には、次のものがあります。
1: 全か無か思考:(黒か白か思考、二分割思考とも呼ばれている):状況を連続体ではなく、たった2つの極端なカテゴリーでとらえること。
物事を両極端、白か黒か、全か無か、のどちらで考える完璧主義。

2.:過度の一般化:その状態が永遠に続くと考える。

3:心のフィルター(選択的抽出とも呼ばれている):全体像を見る代わりに、一部の否定的な要素だけに過度に着目する。

4:a マイナス化思考:肯定的なことをたいしたことではないと、無視、軽視する。
4:b.肯定的側面の否定や割引き:肯定的な自己の経験、功績、長所などを不合理に無視するか、割り引いて考える。

5.:結論の飛躍:「心の読みすぎ」→勝手な否定的憶測と「先読みの誤り」→事態が悪くなっているだろうと予測する。

6:感情的理由付け:自分がそう感じる(そう信じている)から、それが事実に違いないと思い込み、それに反する根拠を無視するか、低く見積もる。

7.:過大解釈と過小評価:(拡大視/縮小視)自分の良いところを過小評価し、他人の良い所を過大評価する。

8: 「ねばならない」「べき思考」(命令的思考とも呼ばれている):自分や他人の振舞い方に、厳密で、固定的な理想を要求し,それが実現しないことを最悪視する。
自分または他人を「~べき」「~べきでない」と批判する『性格の中枢』。

9: レッテル貼り:より合理的な根拠を考慮せず、自分や他者に対して、固定的で包括的なレッテルを貼り、否定的な結論を出す。

10.:個人化(自己関連付け):他者の否定的な振る舞いを、他のありそうな見方を考慮せずに、自分のせいだと思い込む。

11.:破局視(運命の先読みとも呼ばれている):他の可能性、特に現実的にありそうな可能性を考慮せず、未来を否定的に予言すること。

12:読心術:他のより現実的な可能性を考慮せず、他者が考えている内容を自分が分かっていると思い込む。

13: トンネル視:状況に対して、否定的な側面しか見ない。
例:「息子の担任教師は、何ひとつきちんとできない。
彼は批判的で、鈍感で、しかも教え方が下手だ」

これらの歪みは、単独あるいは組み合わせで現れます。
強烈な否定的感情は、患者にとって大変辛いものです。
そしてその感情的な辛さが、患者から思考力や問題解決力や行動力を奪い、様々な活動を通じて満足感を得ることを妨害するのであれば、その感情は非機能的思考(認知の歪み)であると言えます。

自分の非機能的思考(認知の歪み)を修正することで、症状が軽減され、最終的に患者の感情的苦痛が和らぐことが、認知療法治療の主目標となってきます
完全に修正することはできませんので、治療前を100%とした場合、30%程度に修正できれば問題なく生活できるようになります。

精神的な障害を抱える人は、その状況に対して、過度にあるいは不適切に強い感情を経験することが多いのです。

*自動思考の修正法1/6
@1:ネガティブな感情を出来るだけ書き出す。
@2:それを客観的・生産的な感情に置き換えていく。
(例)ネガティブ:第一志望の大学に落ちて、もう何もかも台無しだ!
置き換え:本当にすべてがダメなのか~~やりたいことがやれる
大学なら第一志望にそれほど執着する必要はないのではないか!!

 

*自動思考の修正法2/6

「下向き矢印法」
文字通り紙を用意して、辛かったことを書き出し、下向きに矢印を書いて考えて行く方法です。
いろいろ悩んでぐるぐる回って疲れてしまう時は、下向き矢印法で悩みの距離を縮める方法も使ってみてください。

(例 )
出来事    : 同窓会に行くことを考える
自動思考 : 同窓会で彼女に近づくのが不安だ

Q:何が起こると思いますか?

私は彼女に拒絶されるだろう

Q:もし そうなったら? それは・・・ということである。

私は負け犬だ。

Q:もし、自分が負け犬なら? それは・・・ということである。

私は誰とも親しくなれない。

Q:もし、誰とも親しくなれないのなら? それは・・・ということである。

私は永遠に独りぼっちだ。

Q:もし、自分が永遠に一人ぼっちなら? それは・・・ということである。

私は独りぼっちでは、決して幸せになれない。私はいつも不幸だ。

Q:背景にある思い込みは何だろう?

私が幸せになるためには、誰かが必要だ。

*自動思考の修正法3/5
「自動思考に対する質問~別の見方を見つけるための質問リスト」

1. 自動思考を支持する根拠は何か?この自動思考に反する根拠は何か?
2. 何か別の見方は、あるだろうか?
3. 起こりうる最悪の結果とは、どのようなことだろうか?自分はそれを切り抜けられるだろうか?起こりうる最良の結果とは、どのようなことだろうか?起こりうる最も現実的な結果とは、どのようなことだろうか?
4. この自動思考を信じることによって、どんな効果があるだろうか?この自動思考を修正すると、どんな効果があるだろうか?
5. もし___(友人)が自分と同じ状況に置かれていたら、私はその友人に何と言うだろうか?

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*自動思考の修正法4/6

*認知の概念化:認知的概念図の作成

<認知的概念図>
認知的概念図:
関連する幼児期の体験→
中核信念→
媒介信念→
埋め合わせの戦略→
状況→
自動思考→
自動思考の意味(自動思考←→中核信念との関連付け)→
感情→
行動
という一連の流れの中で自動思考の修正をしていこうというものです。


患者の氏名:
日付:
A:<関連する幼児期の体験>:どのような体験が、中核信念を形成し、維持しているのだろうか?(空欄)
B:<中核信念>↓↓
患者において最も中核的な信念(自己や他者に対する、絶対的で、強固で、広範囲に及ぶ認知)は何か?(空欄)
(参考)ネガティブな中核信念を大別すると、
1:自分は好かれていない
2:自分は出来が悪い
3:1+2の3つのパターンになります。
C:<媒介信念>↓↓
(ルール/構え)
「構え」とはA:自他肯定、B:自他否定、C:自分は肯定、相手は否定、D:自分は否定、相手は肯定の4パターンのことです。
患者が中核信念に対処するのに役立つポジティブな思い込みは何か?(空欄)
この思い込みと対照的なネガティブな思い込みは何か?(空欄)
D:<埋め合わせの戦略>↓↓:どんな行動がその信念に対処する為に役立っているのだろうか?(空欄)
状況↓↓
自動思考↓↓
自動思考の意味(自動思考←→中核信念との関連付け)↓↓
感情↓↓
行動

******************************* 

認知的概念図の実際の作成概要>
結果的にA~Dのすべての空欄が埋められればよいのですが、段階を分けて考えていこうと思います。
*「第一段階」
まずは、3つの場面を想定して、患者さんの方で下位の
<状況>→
<自動思考>→
<自動思考の意味>→
<感情>→
<行動>を埋めていきます。
分からない場合には少なくとも
<状況>→
<感情>→
<行動>だけは埋めてください。

<状況>:問題となる状況はなんだろう(空欄~3つの場面を想定する)
↓↓
<自動思考>:その時頭に浮かんだ考えは(空欄~3つの場面を想定する)
↓↓
<自動思考の意味>
患者においてその自動思考はどんな意味をなすのか(空欄~3つの場面を想定する)
*自動思考←→中核信念との関連付け
↓↓
<感情>):どんな感情がその自動思考に関連しているのか(空欄~3つの場面を想定する)
↓↓
<行動>:その後、どんな行動が選択されるのか(空欄~3つの場面を想定する)

*「第二段階」

*<関連する幼児期の体験→中核信念→媒介信念→埋め合わせの戦略>の空欄を埋める


治療者は、自分自身にあるいは患者に以下のように問いかけます。
A:関連する幼児期の体験の空欄を埋める
生活史の中のどんな出来事が(とりわけ幼児期に)、この信念(中核信念、媒介信念)の形成と維持に関連してきたのだろうか?
このような幼少時代についてのデータ収集には、以下のようなものが含まれるべきです。
両親やその他の家族構成間の、継続的なあるいは断続的な
敵対関係、両親離婚、両親や兄弟(姉妹),教師、同級生などとの間の苦痛を伴うやり取り、
非難を受けたとか馬鹿にされたと感じた出来事及び病歴など
幼少期のデータには、微妙なところにまで目を向けていかないと確認出来ないところがあります。たとえば、(妥当性はどうであれ)兄弟(姉妹)との親の愛情の差別、兄弟(姉妹)間の差(優劣)、同級生との優劣、あるいは、親や教師などの期待に答え切れていないという子供らしい受け止め、などです。
関連する幼児期の体験には、エンプティ・チェアやロールプレイで治療していきます。
エンプティ・チェアやロールプレイについては
「自動思考~認知の歪み2/2」の冒頭で説明しています。

次に治療者は、自分自身に以下のように問いかけます。

B:中核信念の空欄を埋める
関連する幼児期の体験をたどって、どのような中核概念が形成され、そして維持されてきたのであろうか?
中核信念を大別すると、1:自分は出来が悪い、2:自分は好かれない、3:1+2の3つのパターンになります。

C:媒介信念の空欄を埋める
「どのような媒介信念が(背景にある思い込み,ルール、構え)を形成して来たのであろうか?」下記参照
媒介信念(中核信念)をとらえる
「ルール」を「条件付き思い込み」としてとらえ直す~ある媒介信念や、その信念における偏りを検討する際、媒介信念を<思い込み>(もし~ならば~である)として表現されていると作業を進めやすいのです。
「構え」
:1:私もあなたもOK、2:私はKOだけどあなたはNO、3:私はNOだけどあなたはOK、
4:私もあなたもNOという4つのパターンがあります。
KO:肯定・NO:否定 という意味です。
2・3・4が、非機能的思考(認知の歪み)のもとになりやすいのです。 


D:埋め合わせ戦略の空欄を埋める
「患者は、この痛みを伴う中核信念
(自己や他者に対する、絶対的で、強固で、広範囲に及ぶ認知)に対処するために、
どのような行動的な戦略が形成されてきたのだろうか?」

患者の広い範囲にわたる思い込みはしばしば
「埋め合わせ戦略」を中核信念につなげてしまうのです。
すなわち次のように考えるのです。

もし患者が「埋め合わせ戦略を実行すれば」、
その時は「中核信念は現実とならずにすむだろう」。
しかし、もし患者が「埋め合わせ戦略を実行しなければ」、
その時は「中核信念は現実となるだろう」。

<典型的な埋め合わせ(対処)戦略>
以下に示すいくつかの典型的な例1~9には対極的なことが示されていますが、
これは幼少期の体験の違いから生じるもので本質は同じです。
1:ネガティブな感情を回避する←→派手に感情を示す(例えば、人の注目を引く)
2:完全であろうと努める←→不完全であるとか、無力であると意図的に見せる
3:過剰な責任感を抱く←→責任を取ろうとしない(意図的に)
4:親密な関係を避ける←→不適切な親密さを求める(意図的に)
5:許可を求める←→注目されることを避ける(意図的に)
6:直面するのを避ける←→誰かを挑発する(意図的に)
7:状況を意のままにコントロールしようとする←→他者に舵取りを任せる(意図的に)
8:子供のように振舞う←→権威主義的(独裁的)に振舞う(意図的に)
9:他人を喜ばせようと努力する←→他人と自分との間に距離をおく、
あるいは自分だけの満足に浸る(意図的に)

A:関連する幼児期の体験
B:中核信念
C:媒介信念
D:埋め合わせ戦略
及び自動思考はお互いに密接な関係にありますので、相互に影響しあいます。
ですから、A→B→C→Dと順番通り明らかにしていくことにはあまり意味はありません。したがってA~Dのどこから(はっきりしているところから)始めてもよく、結果的にA~Dのすべての空欄が埋められればよいのです。

*中核・媒介信念を同定する (B及びCについて)

「自動思考から中核・媒介信念を同定するための質問」
1:始めに治療者は、非機能的思考(認知の歪み)から直接根ざしているのではないかと疑われる重要な自動思考を明らかにします。
2:そして、治療者は患者に対してこの思考の意味することを尋ね、この自動思考が正しいかどうか、検討していきます。
3:1つあるいは2つ以上の重要な信念が明確になるまで、これを続けます。
ある考えが患者に対してどのような意味を持つのかを尋ねることでしばしば、媒介概念が引き出されます。
4:3から引き出された媒介概念が患者においてどのような意味を持つのか尋ねることは、中核信念を明らかにすることにつながります。
媒介信念:条件付きルール・構え
中核信念:その人の人格の形成に深く関わってくる広範囲で絶対的な信念
主にA:私は出来が悪い、B:私は好かれていない、A+Bの両方

*「媒介信念&中核信念を明らかにする方法」

A:自動思考の中に、信念に関連していそうな表現を探していく。
B:ある思い込みについて条件付の条項(もしも・・・・)を提供し、
患者に、これに続く表現を連想して口に出してみるように依頼する。
C:その他としては
1:何らかのルールを直接引き出す
2:下向き矢印法(前述)を用いる。
3:複数の自動思考に共通するテーマを確認する。
4:患者に自らの信念についての考えを尋ねる。
5:信念を明確化するのに適した質問「自動思考(中核・媒介信念)を同定するための質問」を用いて確認する。
6:患者の自動思考の中に、異なる状況でも繰り返し出現してくるテーマを見つけることです。洞察力が高い患者に対してであれば、治療者は繰り返し出現してくるテーマをとらえられるかどうか尋ねることも出来ます。
また,患者がある信念を持っているようだとの仮説を立てた場合、
治療者は患者にその仮説が的を射ているかどうか、直接訪ねてみるのも良いでしょう。
7:患者に直接尋ねてしまうことです。

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