当事者研究

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当事者研究(とうじしゃけんきゅう)は、北海道浦河町にあるべてるの家と浦河赤十字病院精神科ではじまった、主に精神障害当事者やその家族を対象とした、アセスメント(注1)とリハビリテーションのプログラムです。
注1:アセスメント:ある事象を客観的に評価すること~事象=病気(病状)の現在位置

概要

英国サウサンプトン大学精神科教授のデイビッド・G・キングドンと同国ニューカッスル大学精神科上級講師のダグラス・ターキントンの統合失調症における認知行動療法の研究(Cognitive-Behavioral Therapy of Schizophrenia、邦題『統合失調症の認知行動療法』)によれば、統合失調症の当事者の多くは症状に対して受け身であるだけではなく、すでに様々な自己対処を行っていると理解される。
引きこもる、食べ過ぎる、自分を傷つけてしまう、大声を出すなどの行動も、当事者の視点に立てば何らかの理由によってそういう「対処」をせざるを得ない状態と考えることができ、
当事者研究ではそうした様々な「自分の助け方(自助)」に焦点を当てて、
より良い自助ができるように、当事者が主体的に考え、実践していくことが核となっています。

幻覚や妄想を含めた当事者が抱える現実(主観的な視点)から、困難や苦労の成り立ちを理解し、そのテーマや当事者のニーズにせまっていく手法が特徴的です。
障害当事者は様々なニーズを持っており、症状や生活課題などについてもよく話を聞いていかなければ分からないことも多いため、支援ニーズを把握するためのアセスメント(注2)としても行われている。
注2:アセスメント:ある事象を客観的に評価すること~事象=支援ニーズの把握

自らの問題に対して一人で当事者研究的にアプローチしている例もあるが、継続するには基本的に支援者から定期的にフェードバックがもらえるような環境や、ピア(仲間)からの支援が受けられるようなプログラムへの参加が必要である。
はじめは「自己研究」と呼ばれていたが、医学書院発行の『精神看護』で連載がはじまるときに「当事者研究」というネーミングになった。

プログラムの特徴
1:人と「問題」との、切り離し
2:苦労のパターン、プロセス、構造の解明
3:「自分の助け方」の具体的な方法やアイディアを出し、現実に適応できるようなものをまとめて実践計画を立てる
4:実践(実験)結果の検証

当事者研究が大切にする理念

1:自分自身で、共に。
当事者研究の一番の特徴は、自分の抱える苦労への対処を専門家や家族に丸投げしたり、あきらめたりするのではなく、自分らしい苦労の取り戻しを通じて、「苦労の主役」になろうとするところにあります。
2:「自己病名」を決めよう!
自己病名は主治医からもらった医学的な病名ではなく、自分の苦労のパターンをみきわめて、自分自身、あるいは仲間や関係者と一緒になって楽しく考えるものです。「自己病名」を考える上でのポイントは、自己病名を見ただけで、その人の苦労が透けて見えること、ユーモア精神を発揮することです。研究の過程で「自己病名」はかわってもOKなのです。
3:「弱さは力」
当事者研究では、お互いの弱さや苦労をありのまま持ち寄ることによって、その場に連帯感が生まれ、人の苦労や弱い部分が、そのままで人を慰め励ます力に変えられることがあります。
「弱さ」には、人と人をつなげ、謙虚にさせ、新しい可能性を生み出す力があります。
4:経験は「宝」
当事者研究では、どのような失敗や行き詰まりの経験の中にでも、そこには未来につながる大切な「宝=大切な生活情報(資源)」が眠っているという理解をします。今の苦労や困難を解消する知恵とアイディアの素材は、自分自身と仲間の経験のなかに眠っています。
5:「苦労の棚上げ」をする
当事者研究では、抱えている問題に対して、「研究すればいい」と立ち位置を変えると、問題そのものは何も解決していないのに、解消されるということがよくおこります。
これを「苦労の棚上げ効果」といいます。相変わらず困り事は沢山あるけれど、あまり負担を感じなくなります。問題だらけの日々の上で安心してあぐらをかいて座っていられます。自分の助け方の達人は特にこの「苦労の棚上げ」の技を使っています。
6:「見つめる」から「眺める」へ
だれでも、自分の辛い体験を思い出したり、苦しい現実に向き合うことに抵抗を感じたり、回避しようとします。ですから、「自分を見つめる」ということに不安や恐れを感じる人がいます。
しかし、当事者研究では、基本的に「自分を見つめる」ということはしません。そうではなくて、研究に必要と思われる自らの経験や生活情報をお互いにテーブルに広げるように出し合い、それを眺め、見渡しながら並び替えたり、議論し合いながら苦労の起き方のパターンを考えたり、その意味を考えたりする作業を行います。

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7:「考える」ことの回復
当事者研究では、「考える」という営みの回復を大切にしています。それは精神障害者とは「考える」という人間の最も大切な営みを困難にするからです。しかし、私たちは当事者研究に参加することを通して、自然な形でその営みを取り戻すことが出来ます。当事者の生活場面には、実に数多くの「考えること」に繋がる苦労の「素材」が眠っています。
それは、料理に例えると「資材」をもとに、工夫を凝らして一人ひとりが自分の口に合うメニュー
(生き方のメニュー!)を考えて、調理していくようなものです。
8:「人」と「問題」を分けて考える
当事者研究で大切にしていることは「人」と「問題」を分けて考えることです。
どんな出来事でも「人が問題なのではなく”問題”が問題なのだ」と考えるところから研究は始まります。
9:主観・反転・”非”常識
当事者が見て、聞いて、感じていることを尊重し、
受け止めようとする姿勢を大切にしています。
そのためには、当事者が抱えている幻覚や妄想などのエピソードも、
共にその世界に降り立ち、現実を共有し、苦労に連携しながら、
新しい生き方のアイディアを一緒に模索し、探求します。
更に、既成概念や常識にとらわれずに、苦労の現実が持つ新しい可能性を見出そうとします。
10:生活の場は大切な「実験室」
様々なツール(ロールプレイ、絵に描く、ものに置き換えるなど)を
積極的に活用することによって、
「何がどうなっているのか」
「何をどうすればいいのか」が明らかになり、
日常生活の場がそれの試行錯誤を可能する
大切な「実験室」となるのです。
11:いつでも、どこでも、いつまでも
当事者研究は時間と場所、期間を選ばず、必要な時に、
いつでも進めることが出来ます。
そこには、辛いことなどに、ちょっと立ち止まって、
「研究してみよう!」という勇気の動機付けの意味合いがあります。
12:にも関わらず笑うこと
ユーモアの語源が、「にもかかわらず笑うこと」と言われるように、
「笑う」ということは、究極の「生きる勇気」だともいえます。
13:「言葉」を変える、「行い」を変える
当事者研究では、行き詰まりを打破する方法として、困難を語る「言葉を変えていく」「行いを変える」ことを重視します。その「言葉」と「行い」によって目に見える現実の苦労の風景が変わることがあります。その意味で「当事者研究」とは、現実を物語る新たな言葉を創造し、言葉を育て、「振る舞い」を生み出していく作業作業であるということが出来ます。それは、かつての「べてるのメンバー」松本寛さんが、「統合失調症は友だちができる病気です」と語った言葉によって、私たちのかかえる病気や生きる場が全く違った風景で見えるようになり「統合失調症ブランド化」を促したように、「悩む」ことが「研究」することに変わり、「思い煩う」ことが「考える」に、「悩む」ことが「研究」することに変わり、「病気の失敗」が「有用な人生経験」へと変わっていくのです。
14:病気も回復を求めている
当事者研究では、「病気も回復を求めている」という考え方を大切にします。つまり、「病気が自分の生活をジャマしている」「病気さえなかったら」という生き方ではなく、自分が病気の足を引っ張らない生き方や暮らし方を見出すという点に着目します。病気や病状のシグナルは、私たちを回復に向かわせようとする大切な身体のメッセージでもあるのです。
15:当事者研究は頭でしない、足でする
研究と言うと、どうしても机に座って頭で色々と思考をめぐらすというイメージがあります。しかし、当事者研究では、足(身体)を使って具体的に行動し、人と出会い、困難な現実に立ちながら仲間と一緒に考えるというプロセスを大切にしています。当事者研究の理念は、多くの研究活動の中から生まれた大切な指針です。そして、これからも当事者研究の現場から、新しい理念が生まれ加わっていくことでしょう。

当事者研究の実際作業

 %自助的グループでやることが効果的な当事者研究 (一人でもできるところもたくさんあります)
*グループ内で話したことは、他言しないことを全員に納得してもらったほうが方が発表などもしやすくなります。

1:まず、心の病を持ったことによる経験を、
問題や不幸として捉えるのではなく、
「苦労してきた自分」と理解します。
そして、自分の「お客さん(注1)」を理解し、
そのパターンを「自己病名(注2)」としてとらえます。
その「苦労してきた内容」→「弱さの情報公開(注3)」と
「自己病名~変更可」を、グループの中で発表します。

2:その内容について、その人に自分の経験から何か軽いタッチをしてもいいし、「なるほど~」「それあるある!!!」など、その場の雰囲気を軽くするような傾向が好ましいと言われています。
それは、当事者が病気の辛さを経験したした人→苦労してきた(生きづらさ)を経験した人と角度を変えて自分を見ていることが
前提にあるからです。
色々な他人の経験や自分の意見などをすりあわせて、
最終的なその場での「自分の助け方(注4)」を見つけていきます。
(病状・環境などは刻々と変わる→その場での、という表現にしました)

注1:「お客さん」~何かをしようとした時に突然起きる不安や心配(マイナスのお客さん)、
または、「自分は何でもできるんだ」という根拠の無い優越感 (プラスのお客さん)をいいます。
不安や心配が身体に現れた時(頭痛、ドキドキ感など)は「身体のお客さん」といいます。
参照:自動思考~認知の歪み 

注2:「自己病名」~主治医からもらった医学的な病名に対して、当事者自身の実感に基づいた生活感あふれる「病名」が自己病名です。
みんなで考えるとユニークな自己病名が生まれ、それが苦労の内容とマッチすることで、医学的な病名より前向きな姿勢になることが、できるようになります。

注3:「弱さの情報公開」~困っていること、苦労していることの情報は、一人で抱え込まないで、場で共有されることで、その場全体の空気を和らげ、お互いの中に助け合いの心を呼び覚まします。そこから、新しい知恵やアイディアがうまれます。
自分の心の中で洞察してきた苦労を言葉などによって自分の外(グループなど)に出す外在化という作業をすることによって自分の問題点を把握しやすくなり、気持ちの整理が促される効果が期待もできます。

注4:「自分の助け方」~様々な困難に直面した時、自分にあった「自分の助け方」の具体的な方法(技)を知っておく必要があります。主役は、苦労を抱えた当事者自身です。
しかし、「自分の助け方」の方法は仲間との連帯によってより、効果的なものになります。

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