自動思考~認知の歪み2/2

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*自動思考の修正法5/6

*具体的に自動思考を修正する

認知的概念図がある程度出来上がりましたら、患者さんにそれを提示することで、自分の中の自動思考の歪みの仕組みを理解してもらいます!
*関連する幼児期の体験には、エンプティ・チェアやロールプレイで治療していきます。
*中核信念・媒介信念の修正は一旦棚上げしておいて、自動思考を修正していきます。
それは、自動思考の修正が、中核信念・媒介信念の修正につながることが多いからです。
エンプティ・チェア:言葉の通りだれも座っていない椅子に
幼児期の体験の対象となる人物をその当時のイメージで座っていると想定して、
幼児期には言えなかったことを現在の自分が言うことによって
中核信念や媒介信念が形成されていく過程が明らかとなる
可能性が大きいと言われている
ロールプレイ:場面想定をした役割分担演技による疑似体験のことで、
幼少期の役割を患者自身が
 自分→親→親以外の身内→その他の人と言うように
2人以上で幼少期における色々な役割を体験することで
客観性を持つことができるようになり、中核信念や媒介信念が形成されていく過程が
明らかとなる可能性が大きいと言われている

実際には、ここまでの作業(認知的概念図がある程度出来上がる)ができますと、患者さんは、もうかなり自分の状況を自覚出来ていますので、
「下向き矢印法」
「自動思考に対する質問~別の見方を見つけるための質問リスト」
「自動思考から中核・媒介信念を同定するための質問」
「媒介信念&中核信念を明らかにする方法」
(認知の歪み1/2参照)でも自分で修正できる部分が多いのですが、
さらに付け加えるとすれば以下のものが考えらます。
*自動思考の修正法6/6

A: ソクラテス式問答法
B:行動実験
C:認知的連続表
D:理屈対感情のロールプレイ
E:他者の視点を参照ポイントにする
F: 「であるかのように」ふるまう技法
G:(治療者からの)自己開示
H:コーピング・カード~自動思考の修正後
I:その信念がもたらす利益・不利益を検討する

A:ソクラテス式問答法により信念を修正する
治療者は、患者さんがその媒介信念(条件付きルール、構えから構成される)を
評価するのを促すため、ある状況における判断に対して、
ソクラテス式質問法を用いて切り込んでいきます。
治療者は、標準的な質問、すなわち思考の根拠や結果を検討するだけでは不十分であると
判断した場合、ソクラテス質問法を用いることがあります。
治療者の質問は、より説得調で、対等な関係で公平なやり取りとは言い難いものになります。まさに反対の立場にある個人間での質問と討論の形式となるのです。
そして患者さんは、このやり取りをフォローする為のホームワーク課題(宿題)として、
古い信念と新しい信念の両方の評価を毎日することになります。

@ソクラテス式問答法を使用するための要点

*対話に「意味と方向を提供する重要な質問」を計画する
*「待ち時間を設ける」~患者が答えるまで最低 30 秒与える
*患者の回答をフォローアップする
*徹底的に質問を行う
*議論された要点を定期的に書いてまとめておく
*治療者が課す徹底的な質問によって、患者に自分で知識を発見させる
@フォローアップ: ある事柄(回答)を徹底させるために、あとあとまでよく面倒をみたり、追跡調査をしたりすること

B:行動実験により検証する
行動実験は、適切に計画された上で実行されれば、面接室の中での言葉を用いる介入技術よりも,より強力に,患者さんの信念を修正させることが出来ます。
これは患者が実際に特定の信念に基づいて
実験的に行動してもらい「現実」を体験してもらうものです。
患者が実験を行うことに対してためらいを覚えているようであれば、
治療者は患者に、その実験に対する気持ちを尋ねたり、
現実的な問題の有無やその時、頭に浮かんでいる思考について尋ねたりします。
患者が実験しやすくするために、
イメージリハーサル(想定され得る事態をあらかじめ予想しておき、その対処法を確認しておく)を行うことが大切になる場合があります。

C:認知的連続表により信念を修正する
この技法は自動思考と、極端に偏った思考を反映する信念(例えば、患者が何らかの対象を、<全か無か思考>の視点からとらえている時)の両者を修正するのに有効です。
例えばXさんは、「すごく出来が良くなければ、自分はダメな学生だ」と信じていました。
そこである考えを、ひとつの認知連続表として表現すると,極端に偏った判断の間には、
広い中間的な領域があるのだ、という認識を持たせることが可能になります。
例えば認知連続表の「成功のグラフ0%~100%」までの中でXさんの置かれている位置を
詳しく他の人のケースと比較して質問していくと最初0%だったものが、50%だったり、色々と変わっていくのです。
認知連続表は、患者が二分割思考(全か無かなど)を働かせている時にしばしば有効です。

D:理屈対感情のロールプレイ(場面想定をした役割分担演技による疑似体験)を用いる
この技法は、「視点ー逆視点法」とも呼ばれ、
次のような発言のある患者に対して特に有効です。
「ある信念が非機能的であることは頭では分かる。しかし、感情的には、あるいは腹の底では、その信念が真実であるかのように『感じる』」場合。
ロールプレイにおいて、治療者はまず、患者に自身の心の「感情的」な部分、すなわち非機能的な信念を強く支える部分を演じるように依頼し、その一方で治療者は、「理屈的」な部分(非機能的であることを頭では分かる)を演じます。
次にその役割を交代します。
いずれにおいても、患者も治療者も患者の立場で演じることに注意してください。
つまり、両者とも「私は」という一人称表現を用いて会話をするのです。
役割を交代することによって、患者は治療者の言葉をモデルとし、合理的な考えを声に出して言う機会を持つことが出来ます。
治療者は患者が演じたのと同じ感情に基づく思考を、
出きるだけ患者と同じ表現を用いて声に出します。
患者自身の言葉を用い、新たな具体的内容を持ち込まないようにすれば、患者は自身の信念に対してよりはっきりと対処できるようになります。
役割交代後、患者が理屈側の役割を続けるのが困難になったら、患者と治療者で一時的に役割を交換するか、あるいは、ロールプレイを一旦中断し、滞った点について話し合います。

@重要@
他のいかなる信念修正の為の技法でも同様ですが、治療者はそこで効果が見込まれるかどうか、その患者にとってその信念を更に掘り下げて行く必要があるかどうか、見定めていかなければなりません。
介入後、治療者はもとの信念への確信度を患者に評価してもらいます。
多くの患者が、理屈対感情のロールプレイが役に立ったと評価してくれています。
しかし中には、この技法を行うことで不快になる人もいます。
どの介入でも同じですが、ある一つの技法を行うかどうかは、患者と治療者の協同作業として決定されなければなりません。
理屈対感情のロールプレイは、論争めいた対話を行う技法である為、治療者は、患者の役割演技中の非言語的な反応を観察しながら患者が挑発されていると感じるのを未然に防ぐ配慮が必要です。
またロールプレイによって、心の中の感情的な部分よりも理屈による判断が優勢になった場合、患者が自分を非難されたとか、否定されたと受け止めてしまわないよう、治療者は配慮しなければなりません。

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E:信念を修正する為にある人物を参照ポイントとする
患者といえども他人の信念について考える時は、
自らの非機能的な信念から心理的な距離をとれていることが多いのもです。
患者にとって自ら信じている思考内容は自分自身にとってのみ真実で正しいものであり、
自分以外の人々に対しては、より客観的な視点を持つことが出来るものです。
患者は徐々に、このような矛盾に気付いていくものです。
以下に、信念から心理的な距離をとれるように導く為の、他人の視点を参照ポイントとする技法を用いた4つの例を紹介します。

例1:
他人の信念を自分に当てはめる。

例2:
媒介信念や中核信念を患者自らが修正していけるように援助するもう一つの方法として、
患者と同じ非機能的な信念を持つと思われる
他の誰かと重ね合わせてみるやり方があります。
患者は、他人の信念における偏りに目をとめ、
そこで生じた洞察を自分自身に適応することが出来る時もあります。
この技法は「自動思考に関する質問」(自動思考~認知の歪み1/2)の仕方をまねて、
「もし、誰か(例:友人)がこの状況にいて、このような思考を抱いていると分かったら、
自分はその友人に何と言うだろうか?」という形で活用することが出来ます。

例3:
治療者が患者との間で展開するロールプレイ(場面設定をした役割分担演技による疑似体験)のバリエーションには、次のようなものがあります。
患者は治療者の教示によって、患者と同じ信念を持っている誰かに向かって、
そんな信念はその人にとって、あまり意味がないのだと分かってもらえるように説得する、という設定です。

例4:
自分の子供を参照ポイントにすることで(子供を持たない人なら、仮に自分の子供がいると想像してもらう)、強固な信念から距離をとることが出来るようになる患者も多くいます。

F:「であるかのように」ふるまう
信念の変化は、その信念に対応している行動の変化をもたらします
そして、行動の変化(「であるかのように」ふるまう)は、今度は、それに対応する認知の変化をもたらします。
信念の強さがわずかであれば、患者は目標行動を容易に、素早く、大掛かりな認知介入を行わずとも変化させることができます。
しかし多くの信念は、患者が行動面での変化を自発的に起こす前に、
いくらかの修正を受ける必要があります。
その際、信念の変化の程度がそれほど大きくなくても、
つまり完全に信念が変化しなくても十分なことがあります。
また、いったん患者の行動に変化が生まれてくると、
信念そのものが徐々に弱まってくるということがあります。
新しい行動を継続するのが容易になり、それがまた信念を弱め、
それがまた行動を容易にする、というように望ましい循環が生まれます。

G:自己開示を用いて信念を修正する
治療者側からの、よく考慮された自己開示(カミングアウト)が、患者に、自らの問題や信念をそれまでとは異なる方法で見つめさせることがあります。
もちろんその自己開示は、治療者の素直な気持ちから生じ、かつ扱われる問題と関連している必要があります。

H: コーピングカード
コーピングカードは、通常、身の回りに置いておける大きさが望ましいです。
患者は決められた回数(例えば1日につき3回)あるいは必要な時はいつでも、
コーピングカードを読むように支持されます。
コーピングカードにはいくつかの書式がありますが、@3つの例をあげておきます。

@1:
鍵となる自動思考または信念を一方に記入して裏面に適応的な思考を記入する書式
コーピングカードに書いてあることが患者の考えの中にしっかりと取り込まれるように、決まった間隔で繰り返しカードを読むように指示すると良いでしょう。
@2.:
ある問題状況で用いるべき対処法略をまとめて書いておく書式
患者が困難な状況におかれた時、試してみる価値のある対処法を箇条書きにしたコーピングカードです。
患者は、自分にとって有効かどうかという視点からコーピングカードを作成します。
@3:
自分の活動性を高めるような自己教示を行う為の書式。
患者の課題への取り組みが不十分な場合には、
活動性を高める為のコーピングカードが役に立ちます。
ここでもやはり、治療者と患者の協同作業的な雰囲気の中で
コーピングカードは作られるべきです。
治療者は、患者に対してコーピングカードを読むこと自体への
動機付けも行わなければなりません。
その為には、コーピングカードを読むことと読まないことに、
それぞれどのような利益・不利益があるか、検討してみると良いでしょう。
特に、患者がコーピングカードを読もうとする瞬間に焦点を当て、
患者が読もうとする時に生じがちな自動思考を予測し、
それらにどのように対応するか、備えておくことが大切です。
@ 自動思考:人間は、実は出来事→自動思考→感情という流れで出来事に対する感情を表します~自動思考とは出来事に対して瞬間的に頭に浮かぶ「思考の癖」のようなものです。

I:その信念がもたらす利益・不利益を検討する

ある信念を抱き続けることでもたらされる利益と不利益を検してみることは、しばしば患者の役に立ちます。治療者はその中で、利益が最小となり不利益が強調され強く印象付けされるように努めます。
例:
あなたが変えたい否定的な思い~
「自分はダメな人間だ」
「自分はダメな人間だ」これを信じることのメリット
次の機会にもっと努力するための動機づけになる
諦めるための口実になる
誰かに元気づけてもらうことができる
これを信じることのデメリット
自分を不適格と考えることで活力を使い果たし自分を傷つける
うつ状態になる
自分がダメだからだと決めつけ経験から学ぼうとしなくなる
カウンセラー>
それじゃあ、合計が100点になるように採点しよう。結果はどうかな?
クライアント>
メリット30点、デメリット70点になりましたよ。
決してメリットがないってわけじゃないけど、デメリットのほうがずっと大きいものだと感じられたから。
カウンセラー>
デメリットの方が大きいと感じられたなら、考え方、認知の仕方を変えることを目指すんだ。
クライアント>
確かに、否定的思考が浮かんだ時の対処法として、この方法は有効そうだね!

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