本日の心理学・名言1483-10

@一枚の絵

一枚の絵がある

縦長の画面の下の部分で
仰向けに寝ころんだ二、三歳の童児が
手足をばたつかせ、泣きわめいている
上から
若い母親のほほえみが
泣く子を見下ろしている
泣いてはいるが、子供は
母親の微笑を
暖かい陽差しのように
小さな全身で感じている

「母子像」
誰の手に成るものか不明
人間を見守っている運命のごときものが
最も心和んだときの手すさびに
ふと、描いたものであろうか

人は多分救いようのない生きもので
その生涯は
赦すことも赦されることも
共にふさわしくないのに
この絵の中の子供は
母なる人に
ありのまま受け入れられている
そして、母親は
ほとんど気付かずに
神の代わりをつとめている
このような稀有な一時期が
身二つになった母子の間には
甘やかな秘密のように
ある

そんなことを思わせる
一枚の絵
HP::お気に入りの詩より~吉野弘氏

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