本日の心理学・名言1482-9

@樹

人もまた、一本の樹ではなかろうか。

樹の自己主張が枝を張り出すように

人のそれも、見えない枝を四方に張り出す。

身近な者同士、許し合えぬことが多いのは

枝と枝とが深く交差するからだ。

それとは知らず、いらだって身をよじり

互いに傷つき折れたりもする。

仕方のないことだ

枝を張らない自我なんて、ない。

しかも人は、生きるために歩き回る樹

互いに刃をまじえぬ筈がない。

枝の繁茂しすぎた山野の樹は
風の力を借りて梢を激しく打ち合わせ
密生した枝を払い落とす――と
庭師の語るのを聞いたことがある。
人は、どうなのだろう?
剪定鋏を私自身の内部に入れ、小暗い自我を
刈りこんだ記憶は、まだ、ないけれど。
HP::お気に入りの詩より~吉野弘氏

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