本日の心理学・名言1478-3

@希望とは生きる力

代表作『この生命ある限り』をはじめ、
大きな勇気と感動を読者に与える本を
世に送り続けるエッセイスト・大石邦子さん。
本日は、若くして突然の事故で絶望の淵に立たされながらも、
決して生きる希望を失わなかったという
大石さんの不屈の歩みをご紹介します。
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私は事故から4年間は寝たきりで、
5年目からリハビリが始まりましたが、
最初は絶望絶望ばかりでした。
寝返りの訓練からでしたが、何度やってもできないわけです。
それこそ何か月も賽(さい)の河原に石を積むような感じでしたが、
この寝返りができるようになって世界が大きく変わりました。
畳半畳だった世界が、倍ではなく、遙(はる)かに広がったんですよ。
ただひっくり返っただけですよ。でも本当に涙が止まらなかったですね。それはもう理屈じゃない。
次は這う練習です。
これは何年もかかったのですが、
右腕だけでふっと体が前に動いた時の喜び。
そうすると、30センチ這えれば1メートル這いたいと思うわけです。
1メートルができれば2メートル。
いまになって考えれば、これが希望なんですよね。
そしていままでの人生で何が一番嬉しかったかといえば、
自分でトイレに行けるようになったことです。
逆に言えば一番耐えがたい屈辱だったのが排尿でした。
リハビリでは毎日妹が3時間おきにトイレに
連れていってくれていました。
下半身は麻痺していますから、出るか出ないか分からないけれど、
行かなければならない。
そうして半年が経った時、お腹を押した瞬間、「出た!」と。
ああいうのは、普通は「失禁」といって恥ずかしいものだと思いますが、あの瞬間、初めて私は「生きられる」って思ったんですよ。
なぜかおしっこが出るなら生きられると思いました。
一つのリハビリって本当に長いんですよ。
だけど、できるようになっていくうちに、
絶望だったものが一つひとつ希望に変わっていく。
だから希望というのは力です。生きる力なんですね。
by文筆家・石川真理子さんとの対談「この人生を凛として生きる」は『致知』2015年5月号の8ページから

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