@愛情をそそがれると能力は開花する?
ここでは社内での男女関係に絞って考えてみることにしましょう。
例えばA子さんの事を気に入った部長がいたとしましょう。
日頃から何かと可愛がったり、部長本人は意識していなくても、
さりげなく大切にすることが増えてくるでしょうね。
当然周囲はどこかヘンということを察知します。
「A子さん部長のお気に入りだから」と特別な目で見るようになります。
周りの人はあまりいい気持ちはしないでしょうね。
しかし、その A子さんの 営業成績は次第に他の人よりも上がっていくことが多いのです。
上司に気に入られるだけで彼女自身の IQ (知能指数)が上がる。
嫉妬する他の社員を尻目に彼女自身の能力がいつのまにか高まっていく。
不思議ですがこれはピグマリオン効果と呼ばれる有名な現象です。
ピグマリオンとはギリシャ神話に出てくる王の名前に由来しています。
それは美しい女神の石膏像に思いこがれ、何とか本物の人間にならないかと
祈って食べ物を与えたり、体を拭いたり、毎日話しかけたりと、
哀れなほどの変身愛を貫いたそうです。
それを見かねた神がとうとう石膏像を本物の間の美女に変身させてあげたという物語です。
このピグマリオンの神話と類似した現象が実際に起きるということを説明した心理実験があるんです。
ローゼンタールという心理学者が 、ある小学校の先生に、
「 Aさん、Kさん、Zさんには、天才的素質がありますよ!」信じ込ませたのです。
もちろんその選択には何の根拠もありません。
つまり小学校の先生に嘘の情報を与えたんですね。
それから1年後本当に実際にその3人の IQ はものすごく向上したと言うから驚きです。
石膏像が本当の人間になったように、「この人はできる!」「この人は素晴らしい!」
という他者の勝手な思い込み、本人の能力を実際に伸ばすことは、実は世の中にはたくさんあるのです。
ピグマリオン効果の分析によると、
その先生はやはり心理学者に指摘された3人の生徒だけには、
様々な望ましい教育的配慮を1年間ずっと行い続けていたことが明らかになっています。
この3人は天才なんだ、と心から信じているわけですから、
他の生徒よりも少し難しい問題を入れてチャレンジさせたり、
問題が解けなくても、いつかは着けると信じて長い間待ってあげたり、
他の生徒よりも叱咤激励する回数がはるかに多かったりしたのです。
IQが延びても、当然のような配慮を先生は、いつのまにかし続けていたのですね。
このようなからくりのため、先ほど例に出した部長に気に入られている A子さんは、
本当に能力が上がっていく可能性が高いのです。
確かに信頼されたり愛されたりして、
いわゆるエコヒイキされることも本人の能力向上という面においてはあながち悪いことではありませんね。
*ピグマリオン効果:他者からの期待を受けることで学習や作業などの成果を出すことができる効果のこと。