#インプリンティング(刷り込み)
記憶は、何度繰り返し覚えても
使わないでいると薄れてくる、
といったことがあるかと思いますが、
発達のごく初期の時期に、「覚えた記憶が、
その後それを変更しようとしてもなかなか変更できないほど
強固な記憶となる現象」があります。
それを、心理学用語で「インプリンティング」といいます。
このインプリンティングは、
発達心理学の分野などでもよく取り上げられていますが、
元々は、動物行動学者のローレンツが提唱した概念です。
あるとき、ローレンツがハイイロガンの卵を孵化させていたところ、
自分の目の前で孵化した雛鳥だけが、
なぜか親鳥ではなく、自分を追いかけてくることに気づきました。
ガンの仲間の雛は、
生まれつき親の後を追いかける習性を持っていますが、
雛は親の顔を知りません。
そこで雛は、生まれた直後に目の前にある、
自分より大きな動くものを親として記憶し、その後を追うのです。
通常記憶は、時間をかけて学習されるものですが、
雛鳥が瞬時に親を記憶する現象をみて、
ローレンツは、
「まるで雛の頭の中に瞬時に印刷されたかのようだ」
という意味で名づけました。
生まれたばかりのか弱い雛鳥にとって、
自分を敵から守り育ててくれる親から離れずにいることは、
生死に関わる大問題です。
その為このような特殊な技能があるのかもしれません。
ローレンツはこの現象が、
まるで頭の中に一瞬の出来事が印刷されたかのようだとして、
刷り込み(imprinting)と名付けた。