本日の心理学・名言1483-4

@つるばら

まっすぐに立つ背を持たない

という非難と

侮蔑に

つるばらよ

どれだけ長く 耐えてきたろう。

 

曲がりやすい幹を持つ

暗くわびしい血統から

急いで逃げようとするかのよう

細い首すじを
横に さしのべ
さしのべ

まわりを

棘で威嚇して

心もとなく

つづいた

成長。

 

空と地の間を 横に這い進む

この成長には かすかな罪の匂いがある

向日性と向地性とのアイノコのような――。

秋になって葉が落ちて

やせて黒ずんだ蔓が

疑い深く からんだまま

がらあきの構図も

はっきり見えてきた。

 

すぎ去った春

この自信のない構図をすきまなくふさいだ

ゆたかな葉と

その上にひらいた無数の花たちは

口のきけない人が

緑と真紅の絵の具だけにたよった

くるしい弁明のようだった。

HP::お気に入りの詩より~吉野弘氏

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