心理療法の一つにフォーカシングという技術があります。
フォーカシングは「焦点を当てる」ということで、英語のFocus(焦点)から来ています。
自分の中の漠然とした感じとか感覚というもの、それ自体に注意を向けていくことで、自分の今の状況や問題を知ったり、それらの問題と自分との関係を質的に変化させていくという技術です。
この「漠然とした感じとか感覚」というのは、怒りや悲しみの感情のようにはっきりしたものではなく、「なんかムカつく」とか「落ち着かない」「なんか不安」というような、もっとずっとモヤモヤした身体感覚に近いものです。
例えば、大好きな人ことを思い浮かべると、ポッと胸の当たりが暖かくなるような気がするとか、反対に嫌いな相手に会わなければいけないとなると、急に全身にけだるさが広がるような、そういう感覚のことです。
これは、特別な技術ではなく、訓練によって誰にでもできるようになります。
簡単にフォーカシングの流れを下記にて紹介します。
1:リラックス(姿勢、深呼吸など)して体の内側の感じに注意を向けます。
2:十分感じたと思ったら、気になっていることや、悩んでいること、取り上げたいことを一つずつ挙げていきます。
3:感情の渦に巻き込まれないようにしながら、挙げた問題を自分から切り離して一つずつ離れた所に置いていきます(それらの問題を自分が遠くから見ている感覚が大切です)
4:問題を切り離すことで、自分の中に出来た空間を心から味わってください~要は色々な問題でいっぱいになっている自己を解放するのです~空間が出来ない場合は「3」を繰り返します
5:焦点を当てたい問題を一つ選んで、その問題に触れた時の感じを味わいます~いったん切り離した問題を再度取り入れるのです。(たいてい、漠然としていたり、モヤモヤしたりしますが、それはそれで構わないので、そのまま丸ごと全体を感じるつもりで行います)
6:「これは何か?」「この問題全体はどんな感じか?」などと自分自身にきいてみて(自己への問いかけ)、体の奥から出てくる複数の言葉やイメージをひたすら待ち続けます。
7:出てきた複数の言葉やイメージと、現在の自分の体の感じとピッタリと合うかどうかを確かめます。~「これだ!という体全体に広がる感じ」を味わいます。~ピッタリと合う言葉やイメージが出てくるまで6と7を繰り返します
8:7で確かめた言葉やイメージで呼び出されてくる体の感じに注意を向けて、「これは何か?」「何が原因か?」などと自分自身にきいてみます(自己への問いかけ)。
9:新しい言葉が出てきたり、イメージが変化したりしたら、それをもよく味わってください。
10:「もう十分だ」と感じたら、出てきた言葉やイメージをそのまま味わって終わります。
11:もう少し先に行きたい感じがありましたら、「6」に戻って「7~9の課程」を繰り返します。
大体、この過程のどこかで体の中で何かがほどけるような感じがしたり、ひらめくものがあったりします。
実際に、深々とした息が出ていきホッするということもあります。
大切なのは、自問した後、頭で考えたなじみ深い言い訳や、自己批判、分析などというものは完全に無視することです。
頭を空っぽにして、体の奥から言葉やイメージが浮かび上がってくるのをひたすら待つのです。
結構思いがけないような言葉やイメージが浮かんできたりする場合もありますが、それについて理屈付けしたり、説明がつかないからと押しのけたりしないで、浮かんできたままに受け取ってあげることが重要です。