本日の心理学・名言2330-1

「天は人の上に人を造らず、人の下に人を造らず」
という言葉があります。つまりこういうことです。

人間が生み出されたときは、
みんな同じ階級で、生まれつき高貴な人と賤しい者の差もなく、万物の霊長としての心と体で、
自然界のあらゆる物を使って衣食住をまかなっていた。
一人ひとりが、人の邪魔をせず、
自由に世渡りしていたのだ、と。

しかし、いまこの社会を見渡してみれば、
賢い人もいれば、愚かな人もいる。
貧しい人もいれば、裕福な人もいる。
貴人もいれば、賤民(せんみん)もいる。

このように膨大な格差があるのはなぜでしょうか。
理由は明らかです。

『実語教』に、
「人学ばざれば智なし、智なき者は愚人なり」とあります。

つまり、賢人と愚人の差は、
学ぶか、学ばないかによって生まれるものなのです。

また、世の中には難しい仕事もあれば、簡単な仕事もあります。
その難しい仕事をする人を地位のある人と呼び、
簡単な仕事をする人を地位の軽い人と呼びます。

よって、医者や学者、国の役人、大きな商売をしている経営者、たくさんの奉公人を使う大農家などは、
地位も高く、上流の人と言われています。
上流階級ならば、自然とその家は豊かになる。
普通の人では到底かなわないかに見えます。

しかし、その原因は何かといえば、
ただその人に学問の力が
あるか、ないかによって差が生まれているのです。
天が決めたことではありません。

「天は、富貴を人に与えるのではなく、その働きに与える」
ということわざがあります。

つまり、さっきも言ったとおり、
人には生まれながらの貴賤や貧富の差はありません。
ただ学問をして物事をよく知る人は、
地位の高いお金持ちになり、
無学な人は、貧しい人になり、地位の低い人になるのです。
by『学問のすすめ』(福沢諭吉・著/奥野宣之・現代語訳)